事例③「いつか」を「今日」に — あるお墓参りに同行して
「いつか」を「今日」に — あるお墓参りに同行して
去年は入院で行けなかった——。
Iさんが、亡くなられたお嫁さまの法事のことを、
心残りそうに話してくださったことがありました。
その横顔がどうにも気にかかり、
「もしご希望があれば、お連れできますよ」とお伝えすると、
そのときは「遠方だし、今はちょっと大丈夫」と、控えめなお返事でした。
それから、面談や日々の生活支援を重ねるなかで、
Iさんとは少しずつ打ち解けていきました。
ふとした身の上話の流れで、ゴールデンウィークが明けたころ、
今度はIさんご自身から「お寺に行きたいな」と希望を口にされたのです。
さっそく住職さまと日時の段取りを整え、Iさんにお伝えすると
「ちゃんと礼服で行かないとね」ときちんと身支度を調えて当日を迎えられました。
遠い道のりの車中では、昔のことや、
奥様さまとの思い出を、懐かしそうに語ってくださいました。
そして帰り道、Iさんはこうおっしゃいました。
「今日は運転、大変だったね。おかげさまで、お寺に行けて良かった。
帰り道、気をつけて帰ってね」
その言葉と穏やかな表情から、この日のお墓参りを
心から喜んでくださっていることが、まっすぐに伝わってきました。
「いつか行きたい」と思いながらも、
体調や距離を理由に、その一歩がなかなか踏み出せない——。
そんなお気持ちは、決して珍しいものではありません。
私たちがそっと背中を押し、隣で支える。
それだけで、誰かの「いつか」が「今日」に変わることがあります。
Iさんの笑顔に、その大切さをあらためて教えていただいた一日でした。